ラマンマッピング分析に困難な混合物 (例:成分が不明、ピークがよく重なったりする、ピークよりバックグランドが高いなど) の場合は多変量スペクトル分解法を用いることによって各成分の代表的なスペクトルを自動的に抽出し、分散状態図も作成できます。
共焦点ラマンマッピング測定を用いた粉体混合物の分析
ラマン分光は、食品粉体混合物のように、原料粉のサイズが大小混合や成分が不明等に対して非破壊・非接触分析が可能です。顕微ラマン分光法の特徴である共焦点マッピング機能 (図1) を用いることで、粉体原料の一粒一粒を区別して可視化することができます。さらにはピークの重なりなど分離しがたい定性評価も多変量スペクトル分解法を用いることで、それぞれのピークを抽出し、分散状態をマッピングによって可視化することが可能です。
食品分析への活用
食品の主成分である炭水化物、脂質、タンパク質の定性と混ざりあい状態を調べる事例には市販パンケーキミックス粉を用いました (図2) 。大きさの異なる原料粉が混在しているため、低倍率と高倍率の2つのマッピングエリアとしました。スペクトル数は4万点 (200点×200点) です。
マッピングデータの多変量解析から6種類の代表的なラマンスペクトルが抽出されました。成分は①砂糖 ②デンプン (小麦粉由来) ③植物油 ④タンパク質 (小麦粉由来) ⑤フェルラ酸 (米粉など) ⑥バニリン (香料など) と定性されました (図3) 。その複合像から各成分の大きさと分布状態を可視化することができました (図4) 。