層構造を観察だけでなく、発現メカニズムの解析へつなげます。
定性的な関係性を明らかにして定量的な指標へ
成形条件により内部歪みや結晶性が変化し、機械物性などが異なってしまうことから、これまで機械物性と高次構造との相関性を明らかにしてきました。この相関性に複合弾性率を活用することで、さらに定量的な指標の可能性が認められました。
材料・試験片形状と成形条件、曲げ試験結果
[材料・試験片形状] 材料:旭化成製 PA66
試験片形状: JIS K7139 多目的試験片 (A1)
[成形条件] 射出成形機 :日本製鋼所製 JSW J-100E-CS
成形条件 :射出圧: 1,000 bar (一定) 射出速度: 約1.5 cm/s (一定)
樹脂温度: 290 ℃ (一定) 金型温度: 40, 80, 120 ℃
曲げ弾性率 (Mf) とインデンテーションパラメーター (Ei) と金型温度 (T) との相関
Mf 、EiのT依存性について良い線形相関が得られ、 Mf とEi との間には強い相関がみられました。これにより、Ei を用いることで、Mf が測定困難な試験片サイズでも数値化することができます。
複合弾性率分布と球晶分布、結晶性分布との関係性
球晶サイズ、結晶性、複合弾性率の各分布での変局点が類似していることから、これらの相関性が認められました。球晶サイズや結晶性が最適な成形条件を設定するための重要項目であることから、複合弾性率を成形条件の指標となることが示唆できました。
まとめ
1) 複合弾性率から求められたインデンテーションパラメーターが曲げ弾性率と強い相関を持つことから、「成形条件」の適正化の指針になることを示唆した。
2) この複合弾性率は、球晶サイズの分布、結晶性の分布の変局点と類似しており、これらの相関性が確認できた。
3) 複合弾性率を成形条件の指標 (定量的) となる可能性が示唆された。