振動分光 (FT-IR、ラマン分光法) によるLIBセパレータの組成分析

振動分光を用いてセパレータの組成分析ができます。

なぜセパレータの組成分析が必要なの?

セパレータは安全性や電池性能を左右する部材だからです。特に、劣化品の組成分析をすることで、電池特性に関わる情報を引き出すことができます。

セパレータは、薄皮一枚で電池の安全性をになっていると同時に電池性能にも影響を与えるため様々な性能が要求されます。図1に、セパレータに要求される主な性能を示します。
試験後品の組成分析をすることで、材料の電圧耐性や電解液耐性も評価できます。材料の変質は、出力特性に効くイオン伝導性にも寄与するため、その組成分析は重要です。

セパレータの分析になぜ振動分光を使うの?

セパレータは主にポリオレフィン系の高分子フィルムが使用されています。このため材質や状態の分析には有機物を得意とする振動分光法が適しています。

図2の上段はセパレータのFT-IR(フーリエ変換赤外吸収分光)分析結果です。得られたIRスペクトルは下段に示した標準品のスペクトルと一致することから、セパレータはポエチレンと定性されました。
振動分光法の中でも標準データの豊富なFT-IR分析を用いると、セパレータの材質を定性することができます。

電池内で変化したセパレータの状態を分析できるの?

可能です。ATR(全反射法)によるFT-IR法を用いて大気非暴露で分析することができます。また、ラマン法を用いると大気非暴露でマッピング分析を行うこともできます。

図3は電池から取り出したセパレータをラマンマッピングにより分析した結果です。初期品はポリエチレンのピークが明瞭に検出されています。
一方、300cyc品の特に負極側で見られる赤色表示部では、蛍光が強く検出され劣化していることが分かります。また、300cyc品の正極側で見られる青で表示した部分からはカーボンと共役ジエン由来のピークが検出され、導電助剤および正極バインダー(PVDF)の分解物がセパレータに付着していると考えられます。
セパレータの組成分析を行う他の手法としては XPS(X線光電子分光)が挙げられます。官能基の同定能力は振動分光より一般的に劣りますが、表面存在元素とその含有率、そして無機・有機を問わず状態分析を行えるので、両者を併用した分析が効果的です。

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