SEMを用いてセパレータの形態観察ができます。
なぜセパレータの形態観察が必要なの?
セパレータは安全性や電池性能を左右する部材だからです。特に、劣化品における形態変化を観察をすることにより、電池特性に関わる多くの情報を引き出すことができます。
セパレータは、薄皮一枚で電池の安全性をになっていると同時に電池性能にも影響を与えるため様々な性能が要求されます。図1に、セパレータに要求される主な性能を示します。
試験を繰り返していくにつれ、セパレータも過酷な状況に置かれているため初期状態を保てなくなっていきます。それにより、孔径が小さくなったり、あるいは、表面付着物の堆積や活物質の脱落による目詰まりが生じたりします。これはイオン電導性を低下させる要因の一つとなります。
また、不純物として混在している金属や脱落した活物質により、セパレータに微短絡が生じる場合もあります。このような状況になると、電池の安全性にも関わってきます。
試験によって生じたセパレータの形態変化を観察することは電池の劣化現象を理解する上で重要な情報を与えます。
なぜセパレータの形態観察にSEMを使うの?
数十~数百μmの多孔質からなるセパレータを観察するのに適しているからです。
セパレータはリチウムイオンの高い導電性を実現するため、数十~数百μmの多孔質からなっています。そのオーダーのサイズを観察するにはSEM(走査電子顕微鏡)が最も適しています(図2)。また、EDX(エネルギー分散型X線分析)による元素分析も行えるため、目詰まり物質などの元素情報を拾うことも可能です。
SEMによる表面観察においては、グローブボックス内で解体した試料を、専用ホルダーを用いることによって、大気に曝すこと事なく、形態を観察する事ができます(写真1,2)。反応性の高い付着物等がついている場合、大気に曝すことで形態が変化してしまう懸念があるため、大気非暴露観察は必須となります。
具体的に、どんなものを見ているのか?
孔の形態や付着物などが観察できます。
写真3に表面SEM観察を行なった初期品・300cyc品負極側・300cyc品正極側のセパレータの写真を示します。また、それらのSEMによる形態観察結果(10,000倍)を、写真4に示します。
初期品ではきれいな孔が観察されていますが、300cyc品では負極側は孔が詰まっている様子が、正極側には堆積物の存在が確認されました。
これらの変化が起こった要因を調べるためには組成情報が必要となります。同一視野内でEDX分析により元素情報を拾うことは、簡便で有効な手法です。より詳細に組成情報を調べる方法として、 ラマン分光や X線光電子分光(XPS)が挙げられます。ラマン分光は官能基の同定能力が高く、また、XPSよりも内部の領域を検出できますので、基材の状態変化を詳細に調べることができます。一方、XPSは官能基の同定能力はラマン分光より一般的に劣り、また空間分解能もラマン分光やSEM-EDXより劣りますが、表面存在元素とその含有率、そして無機・有機を問わず状態分析を行うことができます。これらの手法を組み合わせ、形態-元素-状態の情報を複合的に解析することで、セパレータの劣化状況を詳細に把握することが可能です。