走査電子顕微鏡 (SEM) をわかりやすく解説

材料の分析でよく用いられる手法について、その原理、構成、特徴、分析できる内容などを「わかりやすく解説」します。ここでは電子線を用いて試料の表面を観察するSEM (Scanning Electron Microscope ) について解説します。
数十万倍の倍率で試料表面の凹凸まで観察が可能です。
走査電子顕微鏡 SEM:Scanning Electron Microscope

SEMの仕組み

SEMは電子ビームをつくる鏡体、試料を置く試料室、鏡体と試料室を真空化する真空ポンプ、ディスプレイと操作部などで構成されています。走査した電子ビームの当たった部分から出た二次電子や反射電子を検出器でとらえて電気信号に変換し、試料表面の拡大像をディスプレイに表示する仕組みです。二次電子は試料の表面形状を観察する時に用います。一般的にSEM像と言われると、この像を指します。反射電子は試料の組成分布を観察するときに用い、試料の組成を反映したコントラスト画像を得ることができます。

観察倍率とスケールバー

顕微鏡像で重要なのは、観察倍率ではなくスケールバー、つまりその画像上での長さが実際はどのような長さに相当するのかという情報です。
電子顕微鏡の場合、装置のディスプレイなどに観察倍率が表示されていますが、写真を撮影してコンピュータに取り込んで使用するため、資料や論文などに掲載する際に元の画像を引き延ばしたり縮小したりしていることがあります。
スケールバーがあることで、写真上の倍率を知ることができるのです。 (観察倍率が記載されている場合は、撮影条件を知ることができます)

電子線を利用して試料の表面を観ています

電子顕微鏡は、光でものを見るのではなく、電子線を用いることで形状を再現しているのが特徴です。SEMの利点は大きく3点あります。
①光学顕微鏡の場合、拡大倍率は最大で1000倍くらいが限度なのに対し、SEMは~数十万倍程度まで観察することができます。
②光学顕微鏡に比べて焦点の深度が深いため、凹凸感をとらえやすく立体的な画像が得られます。
③電子ビームの当たった試料から出るX線を利用してEDXと組み合わせることで、試料表面の元素分析が可能です。
一方でデメリットとして、画像がモノクロのため色の違いがとらえられない点などが挙げられます。
SEMは前述の特徴を生かした、試料表面の形状観察や比較、大きさや厚さなどの寸法測定などが主な用途になります。この他にも様々なオプションを付属することにより、多様なデータを得ることが可能です。固体であればプラスチックや金属など大抵のものは観察することができ、金属の試料なら5~10分程度で、樹脂でも金属コーティングをかける時間を含めて30分程度で画像を得ることができます。
大気非暴露の装置を組み込むことで、空気に触れると表面の形状が変化してしまうものも観察可能です。

分解能とは?

顕微鏡の性能は「分解能」で表すことができます。分解能とは分かりやすく言えば、異なる位置にある2つの点を見分けられる最小の距離のことです。写真の装置の分解能は、1.5nm/15kV。これは、電子線の加速電圧が15kVの時、1.5nm離れていれば2つの点を見分けられることを意味しています。ちなみにこの1.5nmとはDNA (約2nm) よりも小さい大きさです。電子顕微鏡はかける電圧によって分解能が変わり、この装置の場合、1kVでの分解能は2.5nmになります。

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