主成分分析を用いた樹脂製品の臭気分析

主成分分析により違いを可視化して臭気成分を推定できます。製品から発生する異臭・臭気を分析し原因物質を特定することは、品質を保つ上で非常に重要です。主成分分析という手法を用いて試料間の違いを統計的に評価・可視化することで、臭気要因となる成分を特定できます。

主成分分析の臭気分析への応用

主成分分析は、多くの情報を含むデータを比較し、それらの差異を特徴づける量 (主成分) を抽出するために活用できる手法です。抽出された主成分を考察することで差異が生じている原因の推定に役立てることができます。新たな変数 (主成分) に要約することで、データ間の特徴 (スコアプロット) 、変数間の関係性 (ローディングプロット) を可視化することができます。
その手法を用いて、様々な成分から構成されている匂いや臭気の原因を判別することに適用することが可能です。ここでは、3種類のゴム手袋の臭気の違いを例に主成分分析の活用方法を紹介します。

市販ゴム手袋の官能評価結果

異なる3社の天然ゴム製の手袋を入手し、それぞれ無臭ガスとともにバックに封入し、官能評価を実施しました。その結果A、B社のゴム手袋は一般的な「輪ゴム」を連想されるような臭気を有していました。一方C社の手袋はA、B社で感じられた臭気の他に「タイヤ」を連想させるような独特の臭気が主に感じられたことからC社の臭気要因について調査しました。

GC-MS測定と主成分分析の結果

各試料ガスを加熱脱着GC-MSで測定 (図1) しました。
検出された全成分について主成分分析によりスコアプロット (図2) を取得し、その結果と官能評価から、第2主成分にC社の臭気要因が多く含まれている可能性があると推測されました。
そこで第1、2主成分への検出成分の寄与率を表すローディングプロット (図3) より第2主成分に大きく寄与する候補成分群から、スペクトル上の差異と比較検討し、C社の「タイヤ臭」の要因と推測されるベンゾチアゾールを見出すことができました。

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