大気非暴露雰囲気下で電子染色を行うことで、従来困難であった、C, O, H以外の元素を含まない、ゴム系のバインダー分散状態を可視化可能となりました。本手法において、固体電解質はLPSに限らず、アルジロダイト型固体電解質にも適応可能です。
大気非暴露電子染色
電極内の各部材を結着させるために用いられるバインダーは、偏在により部材間の結着力や導電性の低下を招き、電池特性に影響します。このバインダーの可視化には、重金属を付与する電子染色がよく用いられますが、従来手法では試料を一度大気下に取り出す必要があり、水分との反応性が高い全固体電池には適応できませんでした。日産アークでは、大気非暴露雰囲気で電子染色を行う手法を開発しました。
固体電解質表面および層内のバインダー分布調査
対象試料:固体電解質層 混錬条件AおよびB
固体電解質:Li6PS5Cl
バインダー:SBS (スチレン-ブタジエン-スチレン ブロック共重合体) 1.5wt%
固体電解質:Li6PS5Cl
バインダー:SBS (スチレン-ブタジエン-スチレン ブロック共重合体) 1.5wt%

固体電解質表面の電位コントラスト像と電子染色後の反射電子像の対比から、バインダー部にのみ選択的に重金属が付与されていることがわかります。この電子染色技術により、電位コントラスト観察では困難であった試料断面におけるバインダー分布状態の可視化が可能となりました。混錬条件Aでは、固体電解質粒子間全域にバインダーが分布しているのに対し、混錬条件Bはバインダーが分布していない領域が存在しています。また、塗工条件は同一ですが、混錬条件BはAと比較し試料膜厚が薄く、バインダーの偏在により厚く塗工できなかったものと考えられます。