電池内の副反応挙動を捉えるために電解液の組成を調べることは重要です。今回は市販NIB電池を遠心抽出により電解液を回収し、1H NMRおよび19F NMRを用いることで、高精度に電解液の組成分析を行いました。その結果、電池内でECの分解が選択的に生じている可能性が示唆されました。
NIB充放電に伴う電解液の組成変化
ナトリウムイオン電池 (NIB) の充放電に伴って、電極上では副反応として電解液成分の分解およびSolid Electrolyte Interface (SEI) の形成が生じます。電解液組成、変質状況を調べることは電池内での副反応挙動を捉えるために重要です。
遠心抽出によるNIB電解液の原液回収
電解液の組成分析を高精度で行うためには、電解液を稀釈せず原液での回収が重要です。市販18650型NIBについて遠心抽出した結果、原液にて電解液を回収することができました。またその回収量はサイクル数の増加に伴って減少する傾向がみられ、電池内で生じている電解液の消費が示唆されます。

NMRによる電解液の組成定量
1H NMRおよび19F NMRを用いることで、NIB電解液中の溶媒およびナトリウム塩の定量が可能です。サイクル数の増加に伴い、エチレンカーボネート (EC) の割合が減少していく様子が観測され、電池内でECの分解が選択的に生じている可能性が示唆されます。

試料名 | EC | PC | EMC | DMC | NaPF6* | total |
初期品 | 8.5 | 24 | 11 | 44 | 12 | 100 |
100サイクル品 | 7.7 | 23 | 11 | 46 | 12 | 100 |
400サイクル品 | 6.3 | 23 | 11 | 47 | 13 | 100 |
試料名 | NaPF6* |
初期品 | 0.9 |
100サイクル品 | 0.8 |
400サイクル品 | 0.9 |
* ナトリウム塩として算出しています。 |