固体Li NMRによるLIB負極材のLi状態分析

固体Li NMRを用いてリチウムイオン二次電池 (LIB) の負極材料のLi状態分析ができます。
 
 
【目次】
 1.なぜ負極材料の固体Li NMR分析が必要なの?
 2.どのように固体Li NMR分析をしているの?
 3.固体Li NMRで具体的に何が分かるの?
   ・初期品の測定結果
   ・長期耐久品の測定結果
 4.最後に

1.なぜ負極材料の固体Li NMR分析が必要なの?

固体Li NMR分析により、負極中に存在するリチウムの状態を知ることができるからです。
 
充放電を繰り返して電池の劣化が進むと、負極中に移動できないリチウム(カーボン層内のリチウム、過剰なSEI被膜中のリチウム塩など)や金属リチウムが生じることがあります(図1)。前者は特に容量低下に、後者は安全性に深く関係します。
 
固体Li NMRによるLi状態分析から、それらの存在の有無を確認することができます。
負極中リチウムのイメージ図

2.どのように固体Li NMR分析をしているの?

密閉型試料管を用いることにより、大気非暴露で測定を行っています。
 
カーボン層内のリチウムや金属リチウム、リチウム塩は活性が高いため、大気非暴露での分析が必須となります。Ar雰囲気グローブボックス内で合材を掻き落とし (写真1)、大気非暴露対応の試料管に詰めて固体NMR装置で分析を行っています (写真2)。
グローブボックス内でのサンプリング
固体NMR装置

3.固体Li NMRで具体的に何が分かるの?

金属リチウム、カーボン層内のリチウム、リチウム塩などの定性をすることができ、その相対量がわかります。
 
Li NMRスペクトルでは、横軸に示す化学シフトがLiの状態に対応し (表1)、ピーク面積はLi原子の数の比に対応します。
 
表1 各Li状態におけるLi NMR化学シフト
 状態δ/ppm 
Li塩、SEI層内0付近
LiC362 付近
LiC277 付近
LiC1812 付近
LiC1245 付近
LiC643 付近
Li intercalated18付近
Li quasi-metal18-110
Li金属270 付近



初期品の測定結果
図2に初期品負極の7Li NMRスペクトル測定結果を示します。放電状態を測定した結果、リチウム塩の信号の他に、微量のLiCx(x>12)の信号が観測されました。
一方、充電状態では、LiC6やLiC12に由来する鋭いピークが観測され、負極内で多くのLiがカーボン層内に存在していることが分かります (図2)。
初期品負極の7Li MAS NMRスペクトル

長期耐久品の測定結果
別試料の長期耐久品では、リチウム塩に加えて金属リチウムの存在が確認されました (図3)。それらの成分の相対量解析結果を表2に示します。
長期耐久品負極の7Li MAS NMRスペクトル
表2 7Li MAS NMRによる負極中Li状態の相対量解析結果
 金属リチウムカーボン層内のリチウムリチウム塩合計
LiC6, LiC12LiCx (X>12)
初期品放電状態N.D.N.D.2179100
初期品充電状態N.D.9316100
長期耐久品5N.D.N.D.95100
N.D:検出限界以下

4.最後に

固体Li NMR分析により、リチウムイオン電池 (LIB) 負極中に存在するリチウムの状態を知ることが可能です。リチウム塩に加えて金属リチウムの成分の相対量解析が行えます。
Liの状態分析に固体NMRを活用ください。

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