PyGC-MSを用いてバインダー種の分析ができます。
なぜバインダー分析が必要なの?
バインダー種を判別することは電池性能評価をする上で重要だからです。また、バインダー種が分かると、電極材料の分析をする際の抽出溶媒を選択することができます。
バインダーは、活物質や導電助剤、集電箔を結着させるために用いられます。バインダー自身は直接的には素反応に関与しませんが、活物質表面や粒子間に多く存在しています。そのため、電池の素反応においてその存在が無視できない材料です。
表1に代表的なバインダー種を示します。このように様々なバインダーが電極の結着材として用いられています。電池性能にも影響を与えるバインダーの種類を判別することは性能評価において重要であるといえます。また、同時にバインダーの合剤電極中における割合を抑えておくことも重要であり、そのためには TG-DTA(熱重量-示差熱同時分析計)測定が有効です。
バインダー種の情報は他の分析にも役に立ちます。例えば溶媒抽出分析を行う際、その前処理手法はバインダーによって異なってきます。バインダー種を判別することで後の分析もスムースに行うことができます。
どのようにバインダー種の分析をしているの?
PyGC-MS(熱分解ガスクロマトグラフ-質量分析計)によって分析してます。
まず、試料から電極合材を掻き取り、これを専用カップに入れて加熱炉に導入します(図1、図2挿入図)。そして、He雰囲気下で高温加熱した際に発生するガスをGC-MSを用いて分析します(図2)。検出成分の同定についてはライブラリーとの比較からMSスペクトルの類似性を中心に判断し、最も可能性が高いと推定される化合物からバインダー種を判別します。
Py GC-MSで具体的に何が分かるの?
バインダーの熱分解物(ガス)がわかります。その結果から、バインダー種を判別することができます。
正極および負極のPyGC-MS測定結果をそれぞれ図3,4に示します。
正極からは、フッ化ビニリデン、1,3,5-トリフルオロベンゼン、テトラフルオロナフタレンおよびペンタフルオロアントラセンが検出されました。これより、バインダー樹脂種はポリフッ化ビニリデン(PVDF)と推定されます。また、負極からは、1,3-ブタジエン、トルエン、スチレンおよびα-メチルスチレン等が検出されました。これより、バインダー樹脂種はスチレン-ブタジエンゴム(SBR)と推測されます。
上記の結果から、溶媒抽出分析を行う際に、適した溶媒を選択することもできます。