DSCによるLIB正極材の熱安定性評価

DSCを用いてリチウムイオン二次電池の正極材の熱安定性評価ができます。

なぜ電極の熱安定性評価が必要なのか?

電極の発熱挙動を把握することによって、電池の安全性が予測できるからです。

リチウムイオン二次電池は現在携帯電話から自動車まで幅広く利用されていますが、一方ではその安全性が課題となっています。特に内部短絡や過充電等によって異常な発熱を生じると発火に至る可能性もあるので、安全性の検討には電極など電池材料の熱安定性評価が必要となります。

どうやって熱安定性評価を行っているの?

DSC(示差走査熱量計)を用いて評価を行っています。

電極と電解液をSUS製耐圧容器に封入した後DSCで測定します。電池材料は大気中の酸素や水と反応しやすいため、封入作業はグローブボックス内で行います。

DSCで具体的に何がわかるの?

発熱の開始温度やピーク温度、熱量がわかります。また、その結果から材料の熱安定性を評価することが可能です。

図2に正極の初期品とサイクル品(200cyc、500cyc)のDSC測定結果を示します。500cyc品においても発熱開始温度やピーク温度の変動は観察されず、サイクル数が増えても熱安定性が保たれていることがわかりました。なお、熱量はサイクル数が増すにつれて小さくなる傾向が認められました。
また、図3に電圧を変えた初期品正極のDSC測定結果を示します。4.5Vまで充電した場合、4.2V充電品と比較して発熱開始温度やピーク温度が低温側に移動し、また熱量についても、4.5V充電品は4.2V充電品よりも若干高い値を示しました。これは、過充電による正極の熱力学的不安定性に起因するものと推測されます。

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