材料の分析でよく用いられる分析機器について、その原理、構成、特徴、分析できる内容などを「わかりやすく解説」します。ここではガス分析として最も知られている「GC-MS (ガスクロマトグラフ-質量分析計) 」について解説します。
気化するものは何でも分析、成分を分離して同定します。
*GC-MS (Gas Chromatograph-Mass Spectrometer)
GC-MSの仕組み
注入口で加熱して気化したガスは不活性のキャリアガスに運ばれ、キャピラリーカラム (ガラスでできた細い管) に送り出されます。ガスとカラム内部との親和性による移動スピードの違いやカラムを昇温加熱したときの沸点の違いを利用して、ガス中の成分を分離します。こうして分離された成分が順番にMSに入って測定されます。図は注入口部に捕集管を加熱するための炉が付いた加熱脱着GC-MSです。
オーブン内部
左上部からカラムが伸びています。管の内径は0.1~0.5mm程度で全長は10~100mです。オーブンは350℃まで加熱することが可能で、気化された成分がカラム内部を分離されながら進んでいきます。
GC-MS の測定結果
GC-MSのデータは、横軸に検出時間、縦軸に検出強度をとり、図のようなクロマトグラム (トータルイオンクロマトグラム) で表示されます。さらに分離した成分ごとに測定されたマススペクトルから同定を行います。成分の同定は60~70万件の膨大なライブラリを活用することで迅速に行うことができます。
揮発する物質は何でも分析!
GC-MSは、試料から出たガスを成分ごとに分離するGC部と、分離した成分を同定 (種類を決定) し、定量 (成分量を決定) するMS部が組み合わさった装置です。
GCの仕組みは約50年前に発表されており、分離・検出する分析器の中で最も完成された装置と言えます。検出感度、分解能ともに優秀で、現在の装置ではMSの中にナノグラムオーダーの成分が入れば検出することが可能です。
また、試料は300℃以下で気化するものであれば何でも対応できます。
また、樹脂など揮発しない試料を測定する場合は、注入口部に熱分解炉を付けて高温加熱します。加熱 (600℃程度) により試料を熱分解させてガス化した成分を測定します。
さまざまな試料にも対応できるため、いかに試料を装置へ導入するかが、分析者の知恵の使いどころと言えます。
GC-MSは大気中の成分を分析するなどの環境監視用の分析機器としてもよく使用されていますが、その他にも品質管理や安全性確認の分野でも活躍しています。
その他の検出器
MS以外の検出器として、成分の熱伝導度の違いを利用するTCD (熱伝導度検出器) や、イオウやリンだけを選択的に検出するFPD (炎光光度検出器) などがあります。こうした検出器は一般に、微量の成分を検出する場合などに用いられます。