材料の分析でよく用いられる分析機器について、その原理、構成、特徴、分析できる内容などを「わかりやすく解説」します。ここでは試料表面を構成する元素を検出分析する「XPS (X線光電子分光分析) 」について解説します。
固体試料表面を構成するすべての元素を分析します。
*XPS (X-ray Photoelectron Spectroscopy)
半球型の分光器で電子を計測
上の写真の①の部分、丸いお椀形の部分が分光器で、正式名は静電半球型エネルギーアナライザーといいます。
超高真空状態に耐えられる固体の試料であれば分析が可能ですので、固体の試料ならほとんど分析できます。XPSは表面の電子を検出するものなので、表面を変化させて機能を持たせた、あるいは変化してしまって機能が変わってしまった材料の分析が得意です。
真空内でX 線を照射
上の写真の②の部分、ここから試料を入れて、メインチャンバへ移動させます。超高真空にしたメインチャンバの内部で試料にX線を当てることで、試料の表面から電子が弾き飛ばされます。これを光電効果といいます。飛び出した電子の種類を調べることで、試料の表面の状態が分かるのです。
固体の試料なら計測OK
超高真空状態に耐えられる固体の試料であれば分析が可能ですので、固体の試料ならほとんど分析できます。 XPSは表面の電子を検出するものなので、表面を変化させて機能を持たせた、あるいは変化してしまって機能が変わってしまった材料の分析が得意です。
ワイドスペクトルとナロースペクトル
XPSのスペクトルは横軸に光電子の結合エネルギー、縦軸に計測された光電子の個数をとって表示させます。スペクトルにはワイドスペクトルとナロースペクトルの2種類があります。ワイドスペクトルでは、ピークの位置から試料に含まれる元素が同定できます。ナロースペクトルでは特定のピークにフォーカスし、スペクトルの形状の違い、エネルギーの差から元素の結合状態などを調べることができます。
元素の種類や組成を測定します
XPSは、試料の表面にX線を当てて、生じる光電子のエネルギーを測定することで、試料を構成する元素を分析することができる分析手法です。水素とヘリウムを除くすべての元素を検出でき、試料の元素の種類だけでなく組成、化学結合状態 (酸化・窒化など) なども分析できます。また、試料のサンプリングが比較的簡単で、−120〜1000℃まで、試料の温度を変えながら分析することもできます。大気に触れることで性質が変化してしまう試料は、グローブボックス内でサンプリングを行います。
実際の依頼では、銅接点のような試料の導電性の低下や変色、接合部の剥離などの原因を特定するといった用途で活用されています。
また、電子が出てくる領域は数nmと非常に薄く、試料の層をアルゴンイオンによってエッチングして (削って) 次の層を測定することにより、表面だけでなく内部 (~数百nm) の元素定性や組成を調べる、つまり、試料の深さ方向の元素分布を知ることができます。