フーリエ変換赤外分光分析 (FT-IR) をわかりやすく解説

フーリエ変換赤外分光分析 FT-IR (Fourier Transform Infrared Spectroscopy) についてわかりやすくご紹介します。

FT-IRの仕組み

光源から出た光とレーザー光源から出た光は、平行光束となり干渉計に入ります。干渉計は、その内部で光を複数の光路に分け、再び合成することで干渉 (2つの波が重なったとき、強め合ったり打ち消し合ったりする現象) を生じさせます。
干渉光は試料室で試料の分子振動に対応した光が吸収されて、検出器にとらえられます。検出器からの信号をデータ化し、コンピュータでフーリエ変換し、得られたスペクトル波形をディスプレイに表示します。

3種類の赤外線

赤外線はその波長によって3種類に分別できます。
FT-IRには中赤外線が主に用いられています。

熱板融着ナイロン樹脂の解析

試料の融着界面をFT-IRによって分析したデータです。
赤い線は非晶状態 (溶融)のナイロン部分のスペクトルを、青い線は結晶化したナイロン部分のスペクトルを示しています。

「分子からの手紙」を読み解きます

FT-IRはフーリエ変換 (Fourier ransform) による赤外分光分析 (Infrared Spectroscopy) のことです。FT-IRは赤外線を吸収した試料の分子の振動をとらえます。フーリエ変換とはデータの解析法のひとつで、複雑で不規則なデータを数学的な処理により、規則的な関数の表現方法に変換する方法のことです。
例えば、音声波形の場合、どんな周波数の成分がどれほど含まれているのかを調べ、波形を時間に沿って見るのではなく、さまざまな周波数の正弦波の和として表します。
従来の分散型IRがプリズムや回折格子で光を分光するのに対し、コンピュータで光の干渉網をフーリエ変換して分光しています。光を一度に分光するため、分散型IRと比べ、感度の悪い試料も測定することができます。
また、迅速に分析でき、かつ試料のダメージが少ないことから、FT-IRは光学顕微鏡と並んで解析の最初に用いられる、もっとも基本的な分析手法です。
空間分解能 (解像度) は約10μm。波数分解能は装置にもよりますが、一般的に4cm-1(ウェーブナンバー、波数の単位で波長の逆数)です。検出感度としては実体顕微鏡 (~500倍) で見える数μmレベルであれば検出が可能です。固体、気体、液体のいずれも測定できますが、光を強く吸収してしまうため、黒色の試料の分析にはあまり適していません。解析の精度を上げるために試料の採取、濃縮といった適切な前処理を行うことが重要です。赤外吸収スペクトルは、物質固有の波形を示します。変換されたスペクトルを数十万件におよぶライブラリと照合し、解析することで、試料の材質はもちろん、劣化や変色など、さらには、分子配向や結晶化度など材料の状態も明らかにすることができます。
赤外吸収スペクトルはまさに、自己紹介がつづられた「分子からの手紙」なのです。

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