金属組織解析をわかりやすく解説

金属組織解析についてわかりやすくご紹介します。

金属組織解析の仕組み

金属組織解析は、金属の組織を観て物性との関連を調べる手法です。
組織の特徴を把握し、それをコントロールすることで、得たい性質 (=開発) や特徴の欠落 (=不具合) を知ることができます。

高張力鋼板(ハイテン)の観察事例

自動車の車体などに使われるハイテン2枚をスポット溶接した良品の断面を観察した画像です。溶接部は高熱によって鋼板が融けて混ざり合い、柱状のマクロ組織ができています。

溶接部と素材部の断面ミクロ写真を見ると、溶接部の結晶粒径が素材部よりも大きくなっていることが分かります。
またEBSP解析 (※1) の図は、溶接部がマルテンサイト (※2) 、素材部がフェライト (※3) であることを示しています。

不良品が発生した際に、この良品の観察結果と比較することで、素材や溶接方法など、どの部分に問題があったのかを把握することができます。

※1 結晶方位解析。走査電子顕微鏡で電子後方散乱回折パターン
(Electron Back Scattering Pattern, EBSP) を解析し、結晶構造の相 (向き) を調べる方法
※2 高熱の鋼を急冷することで得られる非常に細密で硬い組織
※3 純度100%の鉄で911℃以下の温度領域にある組織

金属材料の“個性” を調べます

金属内部の原子は、電子を放出した陽イオンの状態で配列されています。その間を自由電子が動き回り、金属原子同士を結びつけています (金属結合) 。この結びつきが規則正しく配列した結晶体を金属結晶といいます。
金属組織解析は、結晶粒 (金属結晶のかたまり) の分布を観察します。同じ材料であっても、加工や熱処理の過程で加わった力や熱などによって「組織」が変わります。エッチングによって、現れた金属の結晶粒の大きさ (一般的に粒径が小さいと強度[硬さ]が上昇します) や析出物 (周りとは異なる化合物で、Feの場合、Fe3C[セメンタイト]などが代表的です) などを調べることで、どのような加工が行われたのか、強度不足の原因はどこにあるのかといった材料評価を行うことができます。金属組織解析は、腐食しにくい一部の貴金属を除き、アルミや合金を含め、ほぼすべての金属で行うことができます。基本的に光学顕微鏡を用いて観察しますが、近年は電子顕微鏡などを用いて、さまざまな性質を調べることが可能になっています。金属組織とは金属材料が持っている個性の一つです。材料の個性である顔を知ることができれば、部品・製品としての使用目的に合わせて材料を改善することができます。つまり、金属組織解析は、より良いものづくりを進めるための第一歩の分析手法なのです。

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