核磁気共鳴 (NMR) 法をわかりやすく解説

核磁気共鳴 (NMR) 法では、高分子材料などの分子構造や電解液内のイオンや電解質の拡散などを分析することが可能です。試料の前処理がほとんど要らず、非破壊での分析も可能です。

 
有機化合物の分子構造や組成分析に加え、高分子材料などの分子運動性の評価、分子やイオンの自己拡散係性評価といった物性解析も可能です。
 
 
【目次】
 1.核磁気共鳴 (NMR) とは
 2.固体NMRと溶液NMR
 3.具体的な測定手法
  1) パルス磁場勾配核磁気共鳴法 (PFG-NMR法)
  2) 二次元NMR測定
  3) パルス核磁気共鳴法 (パルスNMR)
 4. 保有装置


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1.核磁気共鳴 (NMR) とは

核磁気共鳴 (Nuclear Magnetic Resonance: NMR) とは、磁場中におかれた原子核が特定のラジオ波と共鳴し、吸収する現象です。この吸収量を電気的に測定したものがNMRスペクトルで、解析することで分子内における原子の化学状態や分子構造等を知ることができます。
  
NMRの原理
測定可能な代表的な核種:1H・7Li・13C・19F・27Al・29Si

2.固体NMRと溶液NMR

固体の試料をそのまま測定する固体NMR法と、試料を溶媒に溶解し測定する溶液NMR法があります。
 
溶媒への溶解性が低い材料の構造や、結晶性のような高次構造を調べる場合には、固体NMR法を用います。溶媒に溶解させた溶液NMR法は、主に分子の一次構造解析に用いられます。
 

固体NMR
固体NMRでは、溶媒への溶解性が低い試料を固体のまま分析することが可能です。不要な相互作用を除去し高分解能スペクトルを取得するため、試料を外部からの静磁場に対し54.7°傾けて回転させます。この角度を、マジック角回転 (Magic Angle Spinning: MAS) と呼びます。
固体NMRの分析事例:([]内は関連する核種)
固体高分解能NMR法によるポリマー材の化学組成解析 (F034)』[H,C,F]
固体高分解能NMR法によるフッ素系ポリマー材の構造解析 (F082)』[H,F]
核磁気共鳴分析 (NMR) 法による高分子材料のダイナミクス解析 (P128)』[H,F]
固体NMRによる含フッ素高分子の構造解析 (P114)』[F]
固体NMRによるフッ素系高分子電解質膜の構造・分子運動性解析 (F157)』[F]
固体NMRによるゼオライトの構造解析 (G029)』[Al, Si]
NMRによるケイ素材料の構造解析 (P083)[Si]
固体NMRによるアルミニウム化合物の解析技術 (G023)』[Al]
固体Li NMRによるLIB正極材のLi状態分析 (LIB026)』[Li]
固体Li NMRによるLIB負極材のLi状態分析 (LIB003)』[Li]
Li NMR及びICP-AESを用いたLi状態の定性・定量分析 (D082)』[Li]
同位体ラベル法を用いたGC/MSによる電池反応解析 (D057)』[C]
 
 

溶液NMR
溶液NMRでは、試料を溶媒に溶解させ測定を行います。核を取り巻く周囲の環境や隣合う原子核について知ることができ、分子構造の情報が得られます。化学反応や分子運動のダイナミクスの解析に活用することができます。
 
溶液NMRの分析事例:
NMRによるLIB電解液の定性・定量分析 (LIB014)』[H,F]
溶媒抽出NMRによる電極被膜の定性定量分析 (D060)』[H,F,P]
溶液NMR及びGC-MSによる電解液の組成変化解析 (D080)』[H,F]
   

3.具体的な測定手法

NMR法の具体的な測定手法として、
・PFG-NMR法 (パルス磁場勾配核磁気共鳴法)
・二次元NMR測定
・パルス核磁気共鳴法 (パルスNMR)
を紹介します。
 

1) PFG-NMR法 (パルス磁場勾配核磁気共鳴法)
PFG-NMR法では、NMR測定での静磁場に加え、パルス勾配磁場 (Pulsed Field Gradient: PFG ) を印加することで、分子やイオンの自己拡散係数を調べることができます。
 
PFGとは、空間的に強度の異なるパルス状の磁場のことです。拡散係数が大きい (速く動く) 分子ほどPFGの影響を受けやすく、NMR信号の減衰が大きくなることを利用し、溶液中のイオン、溶媒分子の自己拡散係数を求めることが可能です。

2) 二次元NMR測定
二次元NMRは、2つの周波数軸を用いてスペクトルを表示し、分子内の核間相関や結合情報を明らかにします。例えば、H-Cの直接結合の相関 (HSQC) や2~3結合離れた結合の相関 (HMBC) を測定することで、溶液に抽出した成分の分子構造解析ができます。
 
二次元NMRの分析事例:
NMRを用いたLIB電極のSEI被膜の定性・定量分析 (LIB022)』[H, C, F]
溶媒抽出法を用いたNMRによるSEI抽出液の定性・定量分析 (D085)』[H, C, F]
HSQC測定とHMBC測定

3) パルス核磁気共鳴法 (パルスNMR)
パルスNMR (TD NMR:Time domain NMR)は、NMRの一手法で、試料にラジオ波を照射し、励起された原子核の緩和過程で放出されるエネルギーを測定します。測定結果より緩和時間を求めることで、分子の運動性を評価することができます。
 
パルスNMRでは固体、液体、ゲルなど様々な状態で測定が可能で、高分子の高次構造解析等に活用できます。
 
パルスNMRの説明と分析事例:
『パルスNMR法による高分子の状態解析・物性分析 (P058)』[H, F]
 


 

4.保有装置

Bruker AVANCE III (600MHz)

有機・無機化合物の構造解析、自己拡散係数測定など
可変温度:-120℃~150℃
プローブ:固体、溶液、拡散
NMRの測定対象核:H, C, F, P, Si, N, Li, B, O, Al, Na, ・・・その他多数

日本電子Jeol ECZL500 (500MHz)

有機・無機化合物の構造解析、自己拡散係数測定など
可変温度:-100℃~150℃
プローブ:固体、溶液、拡散 
  
NMR以外も含めた当社の保有設備リストは、保有装置リスト

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