当社では、VOCや消臭剤の使用環境に近似した状態を再現しつつ、迅速に測定する方法を確立しています。ここでは、「フィルム製容器」によるガス分析法について紹介します。
【目次】
1.臭気・VOC測定の課題
2.フィルム製容器による評価方法
3.加熱脱着導入-GC/MS
4.測定・評価事例
・ノート型パソコンのVOC測定事例
・靴の中敷きの消臭効果の簡易評価事例
5.官能試験
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1.臭気・VOC測定の課題
近年、シックハウス症候群の原因物質であると考えられているホルムアルデヒド、揮発性有機化合物 (VOC) などを低減した有機材料や消臭剤等の開発が盛んに進められています。
開発の段階では、その効果を的確に、且つ迅速に把握することが開発のキーポイントになります。臭気やVOCの測定を行う場合は、使用状態を再現して試験を行うことが重要で、そのため特殊な評価室を設けるなど実験準備や使用したガスの除去に手間と時間を費やすなど課題が多くあります。
開発の段階では、その効果を的確に、且つ迅速に把握することが開発のキーポイントになります。臭気やVOCの測定を行う場合は、使用状態を再現して試験を行うことが重要で、そのため特殊な評価室を設けるなど実験準備や使用したガスの除去に手間と時間を費やすなど課題が多くあります。
2.フィルム製容器による評価方法
写真1に示すフィルムは、フッ素系樹脂でできているため、有機ガス成分の吸着性や透過性が少ない性質を持っています。このフィルムで任意の大きさの試料に合わせた容器を作成することで外気に影響されない評価容器が得られます。

1) VOCなどの測定の場合
試験する高分子材料 (または製品) をフィルム容器に入れて所定環境下 (例えば一定温度で保持する、製品を稼働 (電源を入れる) させるなど) で保持した後、容器内のガスを捕集します。
2) 消臭剤などの評価の場合
フィルム容器に消臭剤 (製品) と評価の対象となるニオイガス (標準ガス) を封入します。当社では、ニオイ質に応じた標準ガスを調製しています。各種のニオイ対策にご利用下さい。
3.加熱脱着導入-GC/MS
フィルム容器内に発生したガスもしくはあらかじめ試料とともに封入した標準ガスを写真2に示す加熱脱着導入-GC/MSシステムなどにより測定します。
発生したガスの成分測定であれば定性、定量分析を行います。封入された標準ガス濃度の変化を測定するのであれば経時的に定量分析を行い濃度の減少率を測定します。また成分の濃度が比較的高い場合はガス検知管により簡易的に測定することも可能です。
発生したガスの成分測定であれば定性、定量分析を行います。封入された標準ガス濃度の変化を測定するのであれば経時的に定量分析を行い濃度の減少率を測定します。また成分の濃度が比較的高い場合はガス検知管により簡易的に測定することも可能です。

4.測定・評価事例
ノート型パソコンのVOC測定事例
写真3に示すようにノート型パソコンをフィルム製容器に封入し、通電して容器内のガス成分を分析した結果が図1です。外部の影響を受けることなくパソコンからの揮発成分を測定することが可能で、スチレン、メタクリル酸メチルといったパソコンに使用されている樹脂に由来するモノマーやトルエン、キシレン、酢酸ブチルといった溶剤類などをppbレベルで検出できます。


このように材料・製品から揮発している有機化合物が確認でき、これらの情報から品質の確認や臭い問題の解決の糸口を見い出すことができます。
[関連情報]
・新規導入装置 VOC試験用大型恒温槽の紹介 (F806)
・主成分分析を用いた樹脂製品の臭気分析 (F154)
[関連情報]
・新規導入装置 VOC試験用大型恒温槽の紹介 (F806)
・主成分分析を用いた樹脂製品の臭気分析 (F154)
靴の中敷きの消臭効果の簡易評価事例
試料を濃度一定のガスとともにフィルム製容器に封入し、ガス検知管で測定することで、消臭効果を簡易的に調査することが可能です。
市販されている多くの中敷きには消臭機能が施され、靴の不快なニオイを除去しています。このニオイの成分としてイソ吉草酸が知られています。
消臭機能の比較のために、仕様の異なる2種類の試料を準備し、この成分の除去能力を測定しました。写真4のように試料 (中敷き) をイソ吉草酸濃度が一定のガスとともにフィルム製容器に封入し、所定時間毎に容器内のガスを専用の検知管で測定しました。
5.官能試験
実際のニオイの変化を確認したい場合は、濃度測定と併せて官能試験をおすすめします。
人が感じるニオイの強さは「Weber-Fechnerの法則」で知られるように、試料ガスの濃度に対して対数的に比例します。従って、ニオイの変化を把握するには表1に示す臭気強度の尺度を用いて、官能試験による評価をすることが有効になります。
当社では、パネラーによる官能試験で容器内の臭気強度を評価し、成分濃度との関係を調べることができます。
[関連情報]
・官能評価によるアウトガスの原因部材の特定 (F046)
・におい嗅ぎGC-MSによる臭気要因成分の調査 (F004)
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人が感じるニオイの強さは「Weber-Fechnerの法則」で知られるように、試料ガスの濃度に対して対数的に比例します。従って、ニオイの変化を把握するには表1に示す臭気強度の尺度を用いて、官能試験による評価をすることが有効になります。
当社では、パネラーによる官能試験で容器内の臭気強度を評価し、成分濃度との関係を調べることができます。
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・におい嗅ぎGC-MSによる臭気要因成分の調査 (F004)
臭気強度 | 内容 |
0 | 無臭 |
1 | やっと認知できる臭い (検知閾値濃度) |
2 | 何のにおいであるか判る弱い臭い (認知閾値濃度) |
3 | 楽に検知できる臭い |
4 | 強い臭い |
5 | 強烈な臭い |
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